どういうものを“凄いマジック”と思うかは人それぞれだと思いますが、私はファット・ブラザーズを見たときに単純に「これは凄い」と思いました。それはいままで多くの人たちが越えようとして越えられなかった壁が越えられた、いままで誰も知らなかったそのための秘密がついに出てきた、と思ったからです。この秘密はぜひ知りたいと思ったし、公開された以上そうしなければ世界から取り残されてしまうとも思いました。
実際に彼らの手法を知ったときも単純に「これは凄い」と思いました。それは彼らのマジックを不思議にしている秘密が、目立つ“新しい技法”ではなく、構造的なミスディレクションや動作のタイミングにあったからです。小手先の器用さと新奇性をあざ笑う、マジックの文化にどっしり根を下ろした進化。かつて名作手順の解説を読んでいたときに感じた、あの知的な興奮を久々に覚えました。地味な、小さなサトルティの積み重ねでここまで不思議なことを作り出せる。すべての手順がそんな知的な魅力に溢れています。
このような知恵の使い方、手順への当てはめ方はようやく世界に広まり始めた段階です。それをまだ暖かいうちに、取り残されないうちに日本に紹介したいと思いました。日本のマジシャンたちにはぜひ、現在の枠を越えたマジックが演じられるようになってもらいたいと思っています。このDVDで紹介されている知恵を取り込んだ演技は、そのまま手順をこなしただけの演技よりも格段に不思議さを増すでしょう。
第1巻で示されたこの面白さがさらに加速した第2巻。いま世界で動いているこのスタンダードをぜひ日本に届けたいと思い、このシリーズを翻訳しました。お楽しみください!(滝沢)
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エンターテイメント・オブ・ア・コイン
コインとカードを使ったマジック。流れるようなハンドリングに惚れ惚れするハズ。クライマックスの巧妙さにも注目。
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クイック・トライアンフ
一瞬で現象を起こしてしまう、「トライアンフ」のバリエーション。非常にシンプル、だからこそ不思議。
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イン・ザ・ミドル・オブ・ザ・カード
コレクターのバリエーション。古くからある技法を、現代風にアレンジしています。少し難しいですが、練習の甲斐があります。
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オープン・トライアンフ
究極のトライアンフ。百聞は一見にしかず、まずはデモ動画をご覧下さい。
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リール・シング
リールを使ったビル・チェンジのアイデア。怪しい動き全くなしにいつのまにかお札が別のお札に変化しています。お札だけでなく、コインのチェンジやお札の移動など広く応用が利きます。
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フレキシブル・コイン
名作「ワイルド・コイン」のバリエーション。3枚の銀貨が、3種類のコインに変化します。既存の枠組みにとらわれない発想に注目。
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スルー・ザ・テーブル
カードが机を貫通します。ハンドリングの巧妙さとクライマックスのインパクトが素晴らしい。
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チーキィ・トライアンフ
クリーンに見せられるトライアンフ。細かいところまで考えられていて、非常に参考になります。
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カラーズ・イン・オーダー
ちょっと変わったカード当て。観客の手の中でカードの色が変わります。巧妙なハンドリングに誰もが引っかかるハズ。
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フェルト・トリオ
コインに触ることなく、コイン・マジックを行います。プロットだけでなくハンドリングも非常にユニークで不思議。
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ダブル・ホーンテッド・デック
デックがひとりでに動いて、観客2人に選んでもらった2枚のカードを当てます。デックの改めも可能。それどころか、借りたデックでもできます。