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The Amazing Sally Volume 2(アメージングサリー第2巻)佐藤喜義作品集・第2弾
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さて、佐藤喜義(さとう・きよし)氏が何者であるか、ご存じない方は
第1巻のご紹介
をご覧いただきたいのですが。
一言で言うと「マジック創作家」ということになりましょうか。
その創作意欲は、今なお全く健在であり、氏の作品世界は、膨らむ一方であります。
今回も、その膨大な数のオリジナル作品の中から、さらに選び抜かれた15作品を収録しています。
これはまさに、一級の、粒ぞろいの宝石が詰まった宝箱の中から、さらに厳選して特級品を抜き出すがごとき、贅沢な作業。
これはこれで、選び出すのに「目利き」が要ると思いますが、それを、元mMLスタッフでもある著者の佐藤大輔氏が、見事な手腕で行っています。
━…━…━…━…━…━…━…━…
今回は第2巻ということもあり、より深く、佐藤喜義ワールドを掘り下げようという意図を含んで取り組まれたようです。
そのテーマですが、前半は「数理・セルフワーキング」、そして後半は「パケットトリック」です。
ともに佐藤氏の得意とするジャンルであり、その圧巻の内容に、皆様、圧倒されるでしょう。
現に我々mMLスタッフも、圧倒され、ノックアウトされました。
前半の「数理」ですが、「数理トリック」や「セルフワーキング」にアレルギーのある方もいらっしゃるでしょう。
しかしながら、構築美に満ちた数理トリックには、裏側を知った時にこそ、まさに美的な感動があります。
構造を知れば知るほど唸ってしまう巧妙さ。
また、原理が分からなくても成立してしまう不思議さ、というのもあります。
これもまた驚異です。
あなたの知らない数理の世界が、まだまだある、という驚きに包まれることでしょう。
「まえがき」で触れられていますが、可能な限り、読者の方が自分で実際に操作を行いながら、不思議さを体感できるように書かれています。
言われたとおりに行うと、きちんと結果が出ますが、なぜそうなるのか分からず、狐につままれます。
実際に行って現象を起こしているマジシャンですら不思議なマジックが、観客に不思議に映らないはずはありません。
今回、さまざまな数理原理とそれに基づくトリックが公開・解説されています。
中でも注目なのは、佐藤氏が長年愛用している「システム・ラン」というコンセプトが、紹介されていること。
数回のランシャッフルを連続的に行い、特定の配置を構築したりするもの、といっても、ご存知でない方は分かりづらいと思いますので、
ぜひ実地に本書の記述にあたってください。
また「システム・ラン」だけでなく「分配法」と呼ぶ操作の研究もあり、その中で「ステイスタック」の性質にも深く切り込んでいます。
前回に引き続き、インタビューなどを含んだ多面的な構成となっていますが…
特に今回、数理に関しては、それ自体が一編の論文とも言うべき著者による分析を、「エッセイ」と称して2本配しています。
興味がある方は、ぜひ、じっくりと読み込んでご研究ください。
(マジックを演じるのに必須ではないのですが、ぜひ軽くでも目を通していただいて、その専門性の高さ・深さを「感じて」ください。)
インタビューも、興味深いものです。
さて、もう1本の柱、「パケットトリック」です。
「佐藤氏といえばパケットですよ、待ってました!」とおっしゃるファンの方も多かろうと思います。
第1巻
でもタウンゼンド・カウントを駆使した作品、話題になった「ステラ」の3作などが紹介され、目を見張った方も多いでしょう。
今回も、その佐藤喜義ワールド全開です。
これまた、未知の世界への扉が開かれた感を持たれる方が多いはずです。
それほどまでに、佐藤氏の作品は、世界の何歩も先を行くものです。
今回、面白いのは、「完全終止」という独自に定義づけたコンセプトを語っていること。
最終形において、すべてのカードの両面を見せてあらためよう、という趣旨。
佐藤氏のパケットトリックの特徴的な点は、ありえない回数の変化が起こり、普通だとクライマックスの現象なのに、
さらにそのあと、もう一段の驚きがあるなど、予想を超えてくるダイナミズムにあります。
それに加えての「完全終止」は、もはや敵なし。
一般の観客からすると、まさに魔法使いの魔法を見たとしか思われないほどのインパクトです。
今回、佐藤氏の比較的以前の作品と最近の作品とを、関連するインタビューを挟んで対置することで、
氏の「考え方」の変遷まで浮き彫りになる、という心憎い演出が採られています。
「完全終止」以前・以後と考えることもできますが、とはいえ、以前の作品ももちろん捨石や踏み台ではありません。
すべての作品が魅力を持ち、また実用的でもあるからこそ、ここに収録されているのです。
パケットファンの方は特に、どの作品も残らずお楽しみいただけるものと思います。
まえがき
佐藤喜義さんからの言葉
第1章
アリス・アイズ
[観客が自由に決めたカードの数字の4枚が出揃います!]
デックからカードを配っていき、観客に好きなところでストップをかけて1枚選んでもらいます。
残りのデックを2つに分け、それぞれから同時にカードをめくっていくと、最初に選んでもらったカードと同じ数字が同時にペアで現れます!
さらに、ストップがかかるまで配った山の枚数に従ってデックからカードを配ると、出揃った3枚と同じ数字のカードが現れ、
フォー・オブ・ア・カインドが完成します!
メンタル・サム
[観客が選び出したカードの数字の合計数を見事に当ててみせます!]
十分に混ぜたデックからランダムに現れるカードの数字に合わせて、デックを枚数の異なる複数個の山に配り分けます。
ずっとうしろを向いたままの演者に、そこで使用した数字を報告してもらうのですが、あえてウソも混ぜてもらいます。
それを元に、演者はある数字を紙に書きつけます。
最後に、観客には使用した数字をすべて合計してもらいます。
すると不思議なことに、演者が出した数字は本当の合計数と見事に一致しているのです!
インタビュー:「マジックと数学への興味」
数学への興味、そしてマジックに本格的にのめり込む決定的なきっかけとなったアレックス・エルムズレイ作品集との出会いについて語っています。
第2章
90% パワー・ポーカー
[10枚のカードを観客が自由選択で観客と演者の手札に分配しますが、演者はロイヤルフラッシュで勝ちます!]
ポーカーの話をしながら、10枚のカードから裏向きのまま2枚ずつ出して、観客に好きなほうを選んでもらいます。
これを続けていき、合計5 枚を観客の手札、残りのカードを演者の手札とします。
見てみると、観客の手札はフルハウスになっています。
しかし、観客が自由にカードの分配を決めたにもかかわらず、演者はそれを上回るロイヤルフラッシュで勝ってしまうのです!
シルエット
[よく混ぜた山の中から、観客4人のカードを見事に見つけ出してみせます!]
カードの山から、4人の観客に1枚ずつカードを覚えてもらいます。
これを山の中に戻し、軽く混ぜます。
さらに、観客の指示に従って山を混ぜてしまいます。
演者は山をポケットに入れ、その状態で観客のカードを1枚ずつ探し出してみせます!
フレンズ
[観客と演者がお互いに裏向きのままカードを取っていくと、それぞれの山は赤と黒できれいに分かれています!]
デックから赤いカードと黒いカードを5枚ずつ取り出し、この10 枚をよく混ぜます。
そして、演者と観客がその中から1枚ずつカードを選ぶという手続きを繰り返します。
それぞれが5枚ずつ手にしたところで表を確認してみると、なんと2つの手札は見事に赤と黒に分離しているのです!
エッセイ:「システムランによる保型・変換」
「システムラン」というコンセプトの歴史的背景・可能性を分析したエッセイ。
第3章
フィクセーション13
[観客の指示に従って混ぜた山の状態について、見事に予言してみせます!]
パケットを取り出し、これを混ぜます。
2つの予言が用意されており、観客にどちらかを選んでもらいます。
そして、予言の内容を確認すると、特定のカードの場所が見事に予言されています。
さらにパケットを混ぜたあと、もう一方の予言も見てみると、見事に別のカードの場所を言い当てています。
サターニア
[観客2人が自由に選んだESPシンボルが残りの山の中で奇妙な一致をみせます!]
25枚あるESPカードの中から、2人の観客に1枚ずつカードを選んでもらいます。
残りを2つの山に分けてからめくっていくと、2箇所で同じシンボルが同時に現れます。
最初の観客のカードを見てみると、まさにそのシンボルなのです!
続いて、配りきった2つの山を再び同時にめくっていきます。
すると、今度も2箇所でシンボルが一致するのですが、先ほどとは異なるシンボルです。
これが、2人目の観客の選んだカードのシンボルと見事に一致しています!
ニューサターニア
[上記「サターニア」にさらなるクライマックスを付け加えられる発展形!]
「サターニア」の現象を終えた後、さらに、残りのカードを表裏ぐちゃぐちゃに混ぜて2つの山に配り分けます。
そして、2つの山を上から同時にめくっていくと、すべてのペアでシンボルが完全に一致しているのです!
エッセイ:「分配法およびステイスタックの保型・変換」
「分配法」を群論的視点で解析、そしてステイスタックの性質をまとめたエッセイ
第4章
月影のプリンティング
[両面真っ白な4枚が、観客が選んだカードへと印刷される!]
4枚の真っ白なカードを示します。
デックから1枚のカードを選んでもらい、その表をパケットにこすりつけると、真っ白な4枚に観客のカードの表が印刷されます!
同じように、裏面をこすると、4枚ともに裏面が現れます!
しかし、おまじないをかけると、4枚は一瞬にして両面とも真っ白なカードに戻ってしまいます!
未来カーズ
[観客が選んだカードについて的確にメッセージが予言!さらに…!]
観客に1枚のカードを選んでもらったあと、演者はパケットケースからパケットを取り出すのですが、
それはトランプではなくメッセージが描かれたカードです。
そしてそこには、観客が選んだカードの色やマークが正確に予言されており、
さらに最後のカードには観客の選んだカードが手描きされています。
しかしそれだけではなく、このパケットを手に通した瞬間、
すべてのカードは観客の選んだトランプへと変化してしまうのです!
第5章
星屑のコレクターズ
[「コレクターズ」プロットの名作2つを見事に融合!]
デックから1枚のカードを選んでもらいます。
あらかじめ置いていた4枚のクイーンをその上で振ると、選ばれたカードと同じ数字の3枚が一瞬にしてその間に挟まれて出現します!
ノンオイルあんどクイーンズ
[パケットの表が全部赤→全部黒→全部赤→…と目まぐるしく変化!]
赤いカード4枚のうち1枚を黒いカードと交換します。
すると、4枚とも黒いカードになってしまいます。
そのうち1枚を捨て、別の黒いカードを入れるのですが、今度はなぜか4枚とも赤いカードになってしまいます。
このようにパケット全体の色がころころと入れ替わったあと、最後は4枚ともクイーンになってしまいます!
第6章
インタビュー:「『完全終止』というコンセプト」
パケットトリックの面構成に関するコンセプト「完全終止」についてのインタビュー
エデンの東
[2つのパケットが入れ替わるだけかと思いきや、さらにフォーカードが変化する!]
4枚のエースの山と、4枚の両面真っ白なカードの山を用意し、1枚ずつ交換して反対の山に加えます。
すると、エースの山が4枚とも両面真っ白なカードになってしまいます。
そして、もう一方の山を見ると、4枚とも裏面が現れているのですが、表を見るとなぜか4枚ともキングになっています!
ペンシルベニア
[「アセンション」プロットに、マルチカラークライマックスを追加!]
4枚の赤い数札を示します。そのうち1枚を捨て、代わりに1枚のエースを中に差し込みます
。
ところがエースは消え、なぜか4枚とも赤い数札になってしまいます。
これを繰り返していくのですが、最後のエースを加えると、4枚はすべてエースになってしまいます!
さらに、捨てていた4枚を見ると、なぜか4枚ともキングに変化しているのです!
最後に、4枚のエースを裏向きにすると、すべて裏の色が異なっています!
五番街のルーシー
[「リセット」プロットに、ロイヤルストレートフラッシュへの変化+マルチカラークライマックス!]
手元の4枚のエースが、テーブル上に置いた4枚のキングと1枚ずつ入れ替わります。
しかし、おまじないをかけると、一瞬にしてエースに戻ってしまいます!
さらに、エースとキングを1枚交換だけで、エースのパケットは4枚のキングに変化します!
これをデックの中に入れると、スペードのキングが消えて、もう一方のパケットへと飛び移ります。
見ると、そのパケットはなぜかスペードのロイヤルフラッシュができ上がっています!
最後にこの5枚をめくると、5枚の裏がすべて異なる色に変化しているのです!
参考文献
第1巻に関する追加情報
あとがき
著者はもちろん、引き続き、佐藤大輔氏です。
第1巻と同様に、B5判・ハードカバー106頁の大作。
紙も同様の上質紙で、ずっしりとした重さが価値を感じさせます。
収録作品数は15、今回はすべてカードマジックです(一部「ESPカード」を含みます)。
佐藤喜義氏の、作品に対する「独特のネーミングセンス」もお楽しみください。
イラストや図版も駆使し、アカデミックでありながら、的確な分かりやすい解説となっています。
書籍で学ぶのが苦手という方は、本の「分かりづらさ」が原因の場合も多いので(すなわち本の側に問題がある)、
食わず嫌いをせずに、ぜひお試してください。
前作同様に装丁にもこだわり、表紙デザインはややポップに、カラーを取り込んで一新しつつも、
前巻との統一感を損なわないように配慮されています。
第1巻同様、コレクターの方は、書架に必ず必要な1冊。
もちろん単に飾り用ではありません。内容勝負です。
なお、本項を書いている時点では、
第1巻
も好評発売中です。
作品集ですので、もちろん2巻目だけ、あるいは2巻目から、読んでいただいても構いません。
ですが、1巻目を併せてお読みいただくと、佐藤喜義氏の世界が、より「見える」と思います。
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