パームだけでは物は消せない!?次なる基本は、フェイクパス! シリーズ第7弾。スライハンドマジックの基本を、みっちりと!
カズ・カタヤマ氏による「ステージ・サロンマジック入門講座」の第7巻。 今回の主題、メインテーマは「フェイクパス」です。
ここがポイント!
「フェイクパス」、またの名を「フェイクトランスファー」。 マジックをかじったことのある皆さんなら、用語として、あるいは概念としては、先刻ご存知かも知れません。 とはいえ、この辺りの練習でつまづいて、先に進めずに「退転」「転進」してしまった方も、結構多いのではないでしょうか。
サロン・ステージのみならず、クロースアップのコインマジック等でも基本となる技術です。 これから練習しようという方はもとより、やってみてあきらめていた方も、ぜひご覧ください。 できない方、できているとは思うけれども不安のある方は、この機会にじっくり研究してマスターしましょう。 もちろん、できている方も、改めて基本を見直すのは、ご自身のマジックを高め、あるいは深めるのにとても有効です。
なお、細かい話になりますが、「フェイクパス」の範囲も人によって様々で、狭く定義を取っている方ですと ある特定の「型」「動き」に限定しているケースもあるようです。 あるいは「プット」と「テイク」の「プット」のみを指す、などと規定している方なども。 ですが、ここでは概念として少し広めに捉えて、「フレンチドロップ」なども「フェイクパス」に含めて考えます。 (最も狭い意味の「フェイクパス」を、「基本のフェイクパス」として便宜上区別しています)
また、「フェイクパス」は、「バニッシュ」「バニッシュ技法」などとも呼ばれます。 両者は概ね同義語として捉えてもあながち間違いではありませんが、本質的な意味合いが異なっています。 手から手に、ものを受け渡す。その中で技法・秘密操作を行う。これが「フェイクパス」です。 その後、「握った」手を開いて消失を示す。そこまで含めての全体が「バニッシュ技法」です。 方法・技法面からの命名が「フェイクパス」、現象・効果の面での命名が「バニッシュ」、といえるでしょうか。 あるいは「フェイクパス」を(手段として)用いて「バニッシュ」を行う、という言い方が、一番正確かもしれません。
これらは一方では単に「用語」の問題でもありますから、そんなに拘るべきところでもありませんが… 反面、「本質」に係わる話でもありますので、頭の中を整理しておくことは、マジックを理解する上で比較的重要です。 カタヤマ氏も、DVDの冒頭で簡単に触れています。
さて、「フェイクパス」です。
先ほど、コインマジックなどにも通底すると申し上げましたが… 例えば、東京堂出版の「コインマジック事典」(基本書です)でも、前半部の「技法編」の項目(分類・区分け)が 「パーム」・「(コイン)バニッシュ」・「その他の技法」(プラス「フラリッシュ」) となっているくらいです。 それほど「バニッシュ」(≒フェイクパス)は重要なのです。 技法の大分類として2本の柱を成すものでもあり、また「バニッシュ」は必然的に「パーム」を伴うのが普通なので、 段階としては「バニッシュ」のほうが上位のテクニックということになります。
「パーム」に関しては、本講座でも「第4巻 スライハンド入門・パーム編」で特集し、詳しく学びました。 「パームを学んだら、次はバニッシュ」というのが、まさに王道のコースなのです。
いわゆる「スライハンド・マニピュレーション」のジャンルでは、これは黄金率であり、普遍的・不変的な真理。 ステージだろうがクロースアップだろうが関係ありません。 オブジェクト(物体)の出現(増加)・消失(減少)・変化を扱うタイプのマジック全般における共通項ということです。
それほどまでに重要な「フェイクパス」の世界に、今、まさに。 この「ステージ・サロンマジック入門講座」も踏み込もうとしています。 全12巻を予定する当講座も、折り返し点を過ぎた中盤の7巻目。 いよいよ佳境中の佳境に差し掛かってまいりました。
「フェイクパス」の技術的な困難は、どこにあるのでしょう? 詳しくは今回のDVDをご覧いただければ分かりますが… 行っている動作自体は、(パームの基本ができていれば)そんなに難しいことをしているわけではないのです。
個人的な言い方でいえば、小手先のテクニックではなく、演技を伴う技法だからだと思います。 手から手に、渡した「ふりをする」。 本当は持っていないのに、持っている「ふりをする」。 「本当に渡した」という、その感覚、そのニュアンス、そのリアリティ。 それをいかに作り出すか…です。
これは、手先の技術的な操作(これ自体ももちろん重要です)に加えて、腕を含む全身動作の理解も必要ですし、 さらに重要な「視線の使い方」、また動作のスピードやテンポ、タイミングといった要素、などが全て絡んできます。 角度に気を使う必要もありますし。 極めてトータル的なもので、初心者の方にとっては、一筋縄ではいかないのも当然なのです。
また、総合力が必要とされる分野は、自分でやっていることが本当にそれで「正しい」のかどうかの見極めも難しいのです。 特に初心者のうちは。 分析し始めると、チェック項目が多すぎて、全体が見えなくなり、わけが分からなくなる… 自信が持てないんですね。
そんなわけで自信を失っている方にも、カタヤマ氏の解説は、とても優しく、面白く、分かりやすいので、大丈夫です。 丁寧に、細やかに、詳しく説明しています。 これにより、つまづきを解消し、自信を取り戻して、先に進むことができます。
動きを伴う技法ですから、映像での習得は必須。 まあ、昔の人は、よく本だけでこういうのをマスターしたものですね、と感心してしまいますが… DVDで実際の動きを確認すれば、上述した複雑怪奇な細部に囚われることなく、一目瞭然の感覚的な理解が可能です。 全体像が、直感的・体感的に把握できるわけです。 お手本が目の前にあるのですから、まず誤解の余地はありません。
「フェイクパス」は、ある意味「うその動作」なので、正直な人ほど難しいんです。 難しいな、と思っている方は、多分正直な方でしょう。 第4巻の「パーム」の時も使っていますが、心理的なアプローチも重要です。 それも含めて解説しています。
今回も、基本的な解説から語り起こしていますが、実践で使える応用手順を多数収録しています。 サロンマジックのシチュエーションで見せられるコインマジックなどもあります。 コインマジックも、クロースアップとサロンでは、見せ方が変わってきますので、ぜひご研究ください。
「練習奇術編」の中にも、練習と謳っている割にはかなり本格的な手順も入っています。 さらに、「応用奇術編」を経て、最後には本格的な舞台でも使えるマニピュレーションルーティーンを解説しています。 詳しい収録内容は、下記をご参照ください。
「ライナーノーツ」も、技法や作品の理解が深まると好評をいただいております。 今回も添付されておりますので、参考にしてください。
そして、大好評のコーナー企画「ステージマジック基礎講座」。 今回は、「ミスディレクション・パート1」としてお届けします。
「ミスディレクション」が近代マジック理論として提起されてから、長らく経ちますが… これがマジックセオリーにおける最重要概念、MVPクラスのキーワードであることは、現在でも変わりません。
第4巻の冒頭でも、ミスディレクションについて少し触れていますが、より詳しくそして楽しく掘り下げていきます。 「その1」ということは今後、続きもあるのですが、今回は最も基本的なことを話しているがゆえに… 恐ろしく深い内容となっています。
どんな内容?
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■はじめに フェイクパスとは何か、基本の考え方などを概観します。
●技法編
■基本のフェイクパス ■フレンチドロップ ■Vバニッシュ フェイクパスのいくつかのやり方を取り上げ、詳しく解説します。 「ボールの場合」「コインの場合」と素材によっての微細な違いも説明。 ちなみに3番目の「Vバニッシュ」は、ボール専用の消失法。 サロン・ステージ向きで、四つ玉での消失法としては比較的有名な方法です。
■シャトルパス ■エクスチェンジ これらは厳密には「フェイクパス」ではありません。 (「シャトルパス」は、ややその要素を内包していますが) 最後に解説する「四つ玉の手順」等でも使用しますので、ここで解説します。 項目としてはありませんが、「ユーティリティームーブ」にも触れています。
●練習奇術編
■3つのボールの手順 1個のボールが分裂して増えたり。ポケットに移動したり。 そして3個になって、いわゆる「ツー・イン・ザ・ハンド、ワン・イン・ザ・ポケット」に繋がります。 ポケットにしまったボールが何度も戻ってきて、最後は…本格的な手順です。 (カタヤマ氏はカップ&ボール用のニットボールを使用していますが、紙玉などでも演技可能です。)
■手から手へ移るボール 2個のボールが、1個ずつ手から手に移っていきます。 練習用ではありますが、余分なものを使わず、実用的。 手に握れる小さなものが2個(何でも良い)あれば、すぐに演じられます。
●応用奇術編
■飛行コイン・バージョン2 第4巻で「飛行するコイン」をご紹介しましたので、こちらはバージョン2と銘打っています。 グラスとコインを使う点では共通で、現象も似ていますが、方法的には別の手順となります。 (以前の手順ではフェイクパスを使用していません) 「空気」からコインが作られる、などユニークな演出を含みつつ、グラスの底の貫通、空中移動。 最後にジャンボコインに変化するクライマックスも解説しています。
■破った紙の復活 しゃべりながらサロンマジックとして演じるのに最適。 1枚の紙をびりびりに破いてから丸めて、おまじないをかけると復活する、というシンプルな佳品。 カタヤマ氏が演じると特に、楽しいマジックになりますね。
●舞台用ルーティーン
■四つ玉の手順(ノーギミック版) 四つ玉というのは、ステージ・サロンでのマニピュレーションとしては基本となる「演目」の1つ。 今後、一般的な手順を取り上げる機会もあると思いますが、今回は、ノーギミック版です。 四つ玉といえば、いわゆる「シェル」と呼ばれるギミックを使う方法が一般的ですが… 今回は、比較的珍しい「シェルを使わずに行う手順」を解説しています。
同色のボール4個のみで行うもので、正しく行えば、十分にステージにかけられる手順です。 玉が出現消失、移動などしているうちに、あれよあれよと4個に増えてしまいます。 さらにどんどんボールは現れ続け、最後は、シルクに変化して鮮やかに終了します。 今回の目玉となる本格的なスライハンドルーティーン、ぜひ練習してマスターしてください。
■ローリング 四つ玉の演技中にも、また指慣らしの訓練用にも使われるのが「ローリング」。 指の間でボールを転がしていく技術で、コインマジックのコインロールにも近いフラリッシュです。 1個のローリング、2個のローリングを解説しています。
■【ステージマジック基礎講座7】 ミスディレクション・パート1
重要ですが、一方ではわかりづらい部分もある「ミスディレクション」の理論。 今回は、実際のマジックでの使われ方ではなく、さらにその基礎となる「観客の心の性質」を説明します。 ミスディレクションを、観客心理の5つの性質に還元して理解しようという試み。 ミスディレクション理論解説の入り口として、ここまで分かりやすい形は、初めて見ました。 ある程度マジックをやっている人にも極めて参考になる内容となっています。 次回以降の続編にも注目ですが、今回の部分だけでも大変有用です。
こんな方にオススメ!
ステージ・スライハンドを志そうという方には必須の基本、それが「フェイクパス」です。 もしかしたら、ここが最初の関門となって立ちはだかる印象をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
ですが、ここを乗り越えれば、マジックの世界は大きく広がり、様々な可能性に手が届くようになります。 マジシャンの楽しみが、それだけ増えるということでもあります。
スライハンドマジックの核心である「フェイクパス」。 まさに本丸、ここを攻略すれば、勝利は目前です。 ぜひ、トライしてください。
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