〜ちりぢりになって捕まえろ!離散系カードマジック!〜
野島伸幸によるワンコンセプトDVDシリーズの第1弾。
新創案の独自技法やプロットを核として毎回1つずつ提示。
それに基づく複数の手順や様々なアイデアをまとめて紹介する…
そんなシリーズです。
すなわち、テーマを決めて深堀りしつつも、完成形の「作品」としてはやや幅広く。
ちなみに、内容としては「根本的に」新しい、ユニークなものばかりです。
「掘り方」だけでなく、核となる「テーマ」自体に、既に独自性があるわけですからね。
すべてがオリジナル志向で貫かれた、クリエーター野島伸幸による新DVDシリーズです。
思えば野島の前作「C3」も、1つのコンセプト(新テクニック)を核とした作りでしたが…
今回からのシリーズは、もう少しコンパクトに、さらに絞り込んだ内容でお届けします。
いわば「ミニ作品集」的な分量で、よりライトな、気軽に見られるものを目指しました。
ぜひ、お楽しみくださいませ。
何ができるの?
今回の内容は「チルチルエース」。
基本コンセプトは「散る」ということ。
デック内でカードが別々の場所に「散り」、そして「散った先」で特定のカードが見つかる、という構成です。
シンプルでビジュアル、そしてロジカル。
3つの作品が提示されますが、3つを連続させて1つの長大なルーティンとして演じることも可能です。
「メイトメーカー」「チルチルエース」「スーパーチルチルエース」の3作。
以下、詳しくご紹介いたしましょう。
どんな内容?
■メイトメーカー
観客が選んだカードを、ひっくり返してデックに差し込みます。
その隣のカードを見ると、メイトのペアができています。
軽いタッチの「メイト出現」トリック。
数十秒ほどでスピーディーに現象が起こるので、つかみには最適です。
一連の「ひとつの動作」で全てが完結する、スムーズな流れに注目。
マジシャンなら必ず知っているであろう基本的な原理・手法を使っていますが…
あまりにもテンポが良すぎて、マニアでも困惑させられてしまう可能性があります。
なお、この作品には「散る」要素こそありませんが…
リバースカードをデックに入れ、それが「仲間のカード」を探し出す点で、以下に紹介する作品と共通しています。
「道具の導入」「観客心理の条件付け」など、いくつかの点で連続手順の冒頭部に最適なので
今回ご紹介させていただきました。
■チルチルエース
2枚のエースを表向きにして、一緒にデックの中に入れます。
これは、観客がカットした場所に入れるのです。
2枚のエースが、デックの中央1箇所に隣り合って入っている状態を確認したのもつかの間…
次の瞬間、広げてみると、エースはデック内で、2箇所ばらばらの場所に飛び散っています。
そして、それぞれの場所(隣)のカードを公明正大に抜き出して、見てみると…
残り2枚のエースが現れ…結果的に、フォアエースが揃います。
表題作。
メインルーティンと言ってよいでしょう。
分かれて別々の場所に行き、それぞれの場所でターゲットカードを捕まえる、という展開は、
分離・分散現象に理由(目的)があるため、とても理解しやすい流れです。
目的のカードを見つけるために、カードがあちこち探し回るイメージすら湧きます。
すなわち、デックの中で、カードが自由自在に動き回れるという印象を与えるのです。
■スーパーチルチルエース
4枚のエースを一緒にデックの中に入れますが、広げ直すと4箇所に飛び散ります。
それぞれの隣のカードを抜き出すと、4枚のキングが揃います。
「チルチルエース」のコンセプトを4枚に拡張した、ノックアウトバージョン。
デック内の「小宇宙」の広がりを感じさせる、ユニークなエフェクトです。
こんな方にオススメ!
野島自身は、上記3つの手順を連続させたルーティンとして演じていますが、
必ずしもそれにこだわる必要はありません。
それぞれを独立した作品として、単発ないし他の手順と組み合わせて使用するなど、
好きなようにお使いください。
特に3番目の「スーパーチルチルエース」に関してはやや難易度が高いので、難しいと思われる方は、
最初の2つだけで演じても良いでしょう。
また、その流れから別のマジックに繋げるアイデアも、参考として紹介しています。
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コンセプト的にユニークな「チルチルエース」。
なにか、特定の「カードたち」が「意思を持って」別のカードを探しに出かける、というようにも見えます。
一緒にいた仲間が、別れて、ちりぢりになって、別々の場所にたどりつき、そこで、それぞれが目的のものを見つける…
即物的な「現象」というよりは、現象そのものに、既に「物語性」が内在されているわけですね。
さらに、繋げて演じる場合は、さらにそれを二重に「かぶせて」いくわけで…
ある種、壮大な「ロマン」すら感じる流れとなっています。
メイトを見つけ出す以外にも、カード当て(2枚ないし4枚のセレクションを探し出す)にも演出できますし、
あるいは、色も数も別々の2枚(ないしバラバラの4枚)が、それぞれのメイトを探すという演出にもできます。
エースがキングを探すのでなく「キングがクイーンを」に変えるだけでも、よりストーリー性を持たせられます。
手法的にもユニークで、類を見ないような方法論が使われています。
ベースとした技法も、やや珍しいものですし、その使い方が独特です。
その意味でも応用の可能性を感じる、研究し甲斐のある作品群となっています。
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