こんにちは。 A Study In Secretsの新沼 研です。 David Yoshida氏の最新作「Soul Mate」をご紹介します。
今回のYoshida氏の作品について、私は三重の意味で嫉妬しています。
一つは、「Soul Mate」が、私がずっと昔から解決したかったプロットに対して奇麗な解答を提示していることです。 見事に先を越されてしまいました。
二つ目は、「Soul Mate」が、構造的に新しい可能性を秘めていること。これは後ほど詳述しますが、広い応用可能性を感じます。
三つ目は、作品としての完成度が非常に高いことです。単純明快な現象。簡単なセットアップ。テクニックも不要。しかも他のYoshida氏の作品同様、観客を深く演技に関わらせる手順構成で、どなたでも楽しく演じられる作品に仕上がっています。
<現象> あなた(=マジシャン)は二人の観客に手伝いをお願いします。あなたと観客は、トランプを自由にシャッフルして、自由にいくつかの選択を行います。全ての選択は非常にフェアに行われた様に見えますが、最終的に参加者全員が手元に残したカードを見ると全てAになってしまいます!そう、それは我々がソウル・メイトだからです。
「Soul Mate」のプロットは単純明快です。即ち、観客とマジシャンでシャッフルしたデックの中から、自由な選択によって各自Aを見つけ出してしまうというものです。実はこれ、私自身がずっと形にしたいと思っていたテーマです。しかしある壁が立ちふさがり、どうしても納得のいく形にはなりませんでした。しかしYoshida氏の「Soul Mate」を見て、目からウロコが落ちました。私自身が越えることのできなかった壁を柔軟な発想で奇麗に解決していたのです。
「Soul Mate」は三人で行う「Do As I Do」形式のマジックと言うことができます。「Do As I Do」とは「マジシャンと観客が同じことをすると、不思議なことが起こる」というマジックの一つの型です。 個人的にあまり広まって欲しくないので、さらっと書きますが、「Do As I Do」は、様々な不可能を可能にする「魔法のような手法」です。
私は以前、「Crossover」という作品で「Do As I Do」構造の有用性について詳しく書きました。 私自身ちょっと思い出しただけでも、「mirror」「Parallel Universe」「Fatalism 3.0」「Intuition#3」等々、「Do As I Do」的な手法を取り入れている作品は数多くあります。
マジックをクリエイトする人間にとって、こんな便利な道具はないんじゃないかというくらい無限の可能性をもった手法です。
その「Do As I Do」を3人で行うとどうなるのか。
3人以上の複数人で行う「Do As I Do」形式のマジックはいくつかありますが、「Soul Mate」の面白いところは、「3人」という構造を最大限に生かし、非常にフェアに見える選択を実現している所です。
実はこの「3」という数字がミソで、「Do As I Do」の可能性を広げる、絶妙な働きをしてくれるのです。
「Soul Mate」は3人で行う「Do As I Do」構造の長所をめいっぱい提示してくれました。 今後この構造を生かした作品が数々生まれるのではないかと思います。
他のYoshida作品同様、「Soul Mate」は非常に演じやすく構成されています。
あなたと観客が行うのは、手元のカードをシャッフルし、二つの山に配りわけ、一方を選択するだけです。 使うのもレギュラーデックだけ。難しいテクニックも不要です。 4枚のA全てを出現させることも可能なので、その後に4枚のAを使ったお好きな手順につなげて頂くことが可能です。
上記の通り、「Soul Mate」の本質は、3人形式のDo As I Doの特性を上手に利用した作品であることです。「Soul Mate」の背景を読み解きながら、3人で行うDo As I Do形式の構造について、考察を行います。
「Soul Mate」の裏側を初めて知った時、「Do As I Do」の本来のパワーと「3」という数字の特殊性の奇跡的な融合に感動しました。 是非私と同じ感動を味わって下さい。
“3人のソウルメイトがそろったときに何かが起こる。 それぞれの自由意志により選ばれたカード、そこにソウルメイトの証が・・・。 シンプルだからこそ奥深く、インパクトのある現象です。” - David Yoshida
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